作曲者自身の解説
この作品は、〈夜〉〈白鯨〉〈鱈岬〉の3部から成っている。
1981年にグリーン・ピース・ファウンデーションのもとめにより、第一部の〈夜〉が、アルトフルートとギターの為に、鯨保護キャンペーンを目的として作曲され、同年、トロントにおいて、ロバート・エイケンのフルート、レオ・ブローウェルのギターによって初演された。その後、アメリカ、ニュー・イングランドの歴史と風物に因んだ、2つの部分が付け加れた。
曲は、海(sea)に基づく、E♭、E、Aの3音を旋律的動機とする、パストラール風絵画的小品。
この作品の第一部、〈夜〉は自然保護団体である「グリーン・ピース・ファウンデーション」からの要請を受けた数人の作曲家と共に、鯨保護キャンペーンのために作曲された作品の一つである。因みに、私の他には、レナード・バーンスタイン、ジュルジュ・クラム、マリー・シェーファー等が作曲し、その草稿を寄せている。それらは近く出版され、その印税が「グリーンピース」の基金の一部として使用されることになる。私自身は、捕鯨問題については、「グリーンピース」とはやや異なった考えを持つつもりだが、彼らの自然環境保護の精神と実践には深く共鳴するものがあり、これを書いた。随って、〈夜〉の後に〈白鯨〉と〈鱈岬〉を書き加えたのは、多少は彼らへの皮肉というものであり、またいくらかの私の立場を表明した事になる。
この曲は、万物を生み出す海への頌歌であり、調性の海ーsea of tonality ーの素描である。
新潮社「波」1996年3月号
表紙の言葉として「海へ!」と題して以下の文章を寄せている。
E♭、E、Aの三つの音は、ここ十五年程の、私の、音楽発想の基調音となっている。E♭は、独乙音名では、英語のSなので、この三音はSEA、つまり(英語の)海ということになる。この音程はあくまでも私の音感が択んだもので、海という象徴的音名は偶然に過ぎない。
だが、この地上の異なる地域を結ぶ海と、その千変万化する豊かな表情に、しだいに、こころを奪われるようになった。できれば、鯨のような優雅で頑健な肉体をもち、西も東もない海を泳ぎたい。
武満徹
尚、このSEAのモチーフに関して次郎丸智希氏による丁寧な研究論文が神戸大学附属図書館のサイトで公開されている。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/thesis/d1/D1005565.pdf

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