2014年4月14日月曜日

武満徹 「海へ」

作曲者自身の解説

この作品は、〈夜〉〈白鯨〉〈鱈岬〉の3部から成っている。

1981年にグリーン・ピース・ファウンデーションのもとめにより、第一部の〈夜〉が、アルトフルートとギターの為に、鯨保護キャンペーンを目的として作曲され、同年、トロントにおいて、ロバート・エイケンのフルート、レオ・ブローウェルのギターによって初演された。その後、アメリカ、ニュー・イングランドの歴史と風物に因んだ、2つの部分が付け加れた。

曲は、海(sea)に基づく、E♭、E、Aの3音を旋律的動機とする、パストラール風絵画的小品。

この作品の第一部、〈夜〉は自然保護団体である「グリーン・ピース・ファウンデーション」からの要請を受けた数人の作曲家と共に、鯨保護キャンペーンのために作曲された作品の一つである。因みに、私の他には、レナード・バーンスタイン、ジュルジュ・クラム、マリー・シェーファー等が作曲し、その草稿を寄せている。それらは近く出版され、その印税が「グリーンピース」の基金の一部として使用されることになる。私自身は、捕鯨問題については、「グリーンピース」とはやや異なった考えを持つつもりだが、彼らの自然環境保護の精神と実践には深く共鳴するものがあり、これを書いた。随って、〈夜〉の後に〈白鯨〉と〈鱈岬〉を書き加えたのは、多少は彼らへの皮肉というものであり、またいくらかの私の立場を表明した事になる。
この曲は、万物を生み出す海への頌歌であり、調性の海ーsea of tonality ーの素描である。



新潮社「波」1996年3月号

表紙の言葉として「海へ!」と題して以下の文章を寄せている。

 E♭、E、Aの三つの音は、ここ十五年程の、私の、音楽発想の基調音となっている。E♭は、独乙音名では、英語のSなので、この三音はSEA、つまり(英語の)海ということになる。この音程はあくまでも私の音感が択んだもので、海という象徴的音名は偶然に過ぎない。
 だが、この地上の異なる地域を結ぶ海と、その千変万化する豊かな表情に、しだいに、こころを奪われるようになった。できれば、鯨のような優雅で頑健な肉体をもち、西も東もない海を泳ぎたい。

武満徹






尚、このSEAのモチーフに関して次郎丸智希氏による丁寧な研究論文が神戸大学附属図書館のサイトで公開されている。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/thesis/d1/D1005565.pdf

2014年4月10日木曜日

ギターコンサートシリーズinバッハアカデミー 第10回

2014年5月25日(日)

15:30開演 バッハアカデミー(さいたま市大宮区寿能町2丁目210-2)

入場料:2500円

フルート:古川仁美 (Hitomi Furukawa) 
ギター  :熊谷政治 (Masaharu Kumagai)

シリンクス  C.ドビュッシー
Syrinx               Claude Debussy

フルートとギターのための「時」  平井京子
Moments for Flute and Guitar              kyouko Hirai

海へ       武満徹
Toward the Sea          Toru Takemitsu

マジックサークル   S.アサド
CIRCULO MAGICO             Sergio Assad

2つの中南米風小品      L.ブローウェル
2 Latin American Pieces                  Leo Brouwer

タンゴ・ジェラシー  J.ゲーゼ
Tango Jalousie      Jacob Gade            

2014年4月9日水曜日

ギターコンサートシリーズinバッハアカデミー 第9回

2014年3月23日(日)


ギター:熊谷政治:岡田泰孝



協奏風変奏曲 Op.130  M.ジュリアーニ

Variazioni concertanti   Mauro Giuliani 

カノン風ソナチネ Op.196  M.C.テデスコ
Sonatina Canonica  Mario Caetelnuovo-Tedesco

ニュー・シネマ・パラダイス E.モリコーネ(竹内永和編曲)
Nuovo Cinema Paradiso     Ennio Morricone   Arr.Takeuchi

舞曲第1番 はかなき人生より M.de.ファリャ
La Danse Espagnole No.1  ”Vie Breve”  Manuel de Falla


2014年2月4日火曜日

稲垣稔さんのこと

昨年6月26日、ギタリストの稲垣稔さんが54歳で亡くなられました。

私は1988年から8年間ほどギターが弾けない状況にありました。1996年から少しずつ復帰するのですが、ブランクを克服するにはコンサートで弾くしかないし、演奏レベルの高い方とご一緒させて頂ければ尚、近道だろうと考えました。
ちょうどギターを弾けなくなってから始めた仕事で会社を設立することが出来たので、仕事の宣伝も含めて当時居住していた川口市のリリア音楽ホールでコンサートを定期的に始めたのです。(https://sites.google.com/site/masaharukumagai/home/guo-qunokonsato)
お客さんは無料の代わりに、ブランクのある私が第一線で活躍している演奏家と共演する。私の勉強のためです。企画は当たり、毎回600席のところに1000を超える応募がありました。
私は出演していただける方を色々当たっていましたが、ギターは私の一番の憧れである稲垣さんに連絡を取らせていただきました。駄目元でお願いしました。半分を私との二重奏で半分はソロでと無理なお願いなのです。しかし、二つ返事で了承していただき、逆に緊張してしまいました。「まずい!稲垣さんの音にどうやって合わせりゃいいんだ?」という具合です。
1996年(リリア第2回)と2002年(リリアコンサート第13回)で二重奏、2001年は2000人の大ホールで「ギター協奏曲の夕べ」を企画し稲垣さんに出演をお願いしたところ、A.ピアソラの「バンドネオンとギターのための協奏曲」を弾いてみたいと言われたので、バンドネオンの岡本昭氏を人づてに紹介していただき実現させました。
この演奏の録画か録音があるはずなので、皆さんに聴いていただきたく、今探しているのです。
取り敢えず、音も絵も度重なるファイル変換の為にすっかり劣化した二重奏が出てきたのですが、悩んだ末にアップロードしました。雰囲気だけでも感じていただければと思います。私は聴く度に未だに寂しさを覚えます。








2014年1月31日金曜日

ギターコンサートシリーズinバッハアカデミー 第8回

2014年2月2日(日)

15:30開演  バッハアカデミー(さいたま市大宮区寿能町2丁目210-2)

入場料:2500円

説明を追加

ヴァイオリン:工藤由紀子

ギター:熊谷政治

プレリュード・フーガ・アレグロ BWV.998 J.S.バッハ
Prelude, Fugue, and Allegro    Johann Sebastian Bach 

組曲イ長調 BWV.1025  J.S.バッハ
Suite in A major  Johann Sebastian Bach 

カフェ1930  A.ピアソラ
Cafe1930   Astor Piazzolla 

協奏風ソナタ N.パガニーニ
Sonata concertata    Nicolò Paganini 

6つのスペイン民謡 M.de.ファリャ
Suite Populaire Espagnole




2013年10月21日月曜日

ギターコンサートシリーズinバッハアカデミー 第7回

20131124日(日)  

15:30開演  バッハアカデミー(さいたま市大宮区寿能町2丁目210-2)

入場料:2500円




ピアノ伴奏によるギター協奏曲

ギター:熊谷政治 (Guitar:Masaharu Kumagai)
ピアノ:根岸友美 (Piano:Tomomi Negishi)

プログラム

ある貴紳のための幻想曲 J.ロドリゴ
Fantasía para un gentilhombre Joaquín Rodrigo

ヘンデルの主題による前奏曲とフーガ M.M.ポンセPreludio y fuga sobre un tema de Handel Manuel María Ponce

ギター協奏曲 H.ヴィラ=ロボス
Concerto pour guitare et petit orchestre Heitor Villa-Lobos






ピアノ独奏で根岸さんが演奏するM.M.ポンセ作曲「ヘンデルの主題による前奏曲とフーガ」は、私の大好きな曲でリクエストに応じてくださる根岸さんに感謝です。G.F.ヘンデルのハプシコード組曲第4番(HWV.429)第1曲フーガのテーマによる作品で、幻想的な前奏曲と自由なフーガは魅力あふれる秀作です。あまり演奏されることのない作品ですが機会が増えることを願っております。

2013年10月16日水曜日

ギターコンサートシリーズinバッハアカデミー 第6回

20131020日(日)  

15:30開演  バッハアカデミー(さいたま市大宮区寿能町2丁目210-2)

入場料:2500円



プログラム(チラシと若干変更になりました)

私の信仰の喜び/私はジャスミンの花 A.ヴィヴァルディ

フーガト短調   J.S.バッハ(ギターソロ)


アデーラ/Una pastora yo ami/ソネット J.ロドリゴ


ブラジル風バッハ第5番よりアリア H.ヴィラ=ロボス

3つのブラジル民謡

シークレットラブ/イエスタディ 武満徹編曲(ギターソロ)

私はマリア/ワルツ風の詩/カリエーゴのミロンガ(ブエノスアイレスのマリアより) A.ピアソラ

モーゼス・イブン・エズラの詩集 Op. 207より3つの歌  M.C.テデスコ

ここで取り上げるロドリゴ、ピアソラの作品は演奏される機会が少ない作品ですが、とても美しい曲です。
またテデスコの作品は スペイン・グラナダから他民族の侵略により故郷を追われたユダヤ教徒の詩人モーゼス・イブン・エズラ(1055年~ 1138年頃)の詩をテキストに使っています。テデスコの先祖も1492年にユダヤ人追放令によりスペインを追われイタリアに逃れた一族であり、さらにテデスコ自身が第二次世界大戦においてムッソリーニの人種法から逃れるために米国へ移住しています。おそらくテデスコが自身、あるいは自分の一族に捧げたであろうこの作品は物語を語るような構成になっています。この作品も演奏されることは滅多にありません。

興味がございましたら是非お立ち寄り下さい。

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